クマとインディアン

クマとインディアン Vol.5 「クマになる」

もう二日間、何も食べていない。
そう、あのときから。

四つ足で歩き回り、地面を掘る。
歯をむき出して吠える。

ここは村から遠く離れた場所。
ここに来る前も数日間の断食。

一本の柱を立て、パイプを捧げてある。
柱の根元には二本の矢。
そして、その周りには色を塗った鳥の羽。

その柱から200メートルほど離れたところに穴を掘る。
深さは60cmくらいか。
この穴はクマの穴とよばれるものだ。

東西南北、四つの方角に沿って穴の上に十字に交差する小道をつくる。
この巣穴を柴で囲う。

そろそろ、その時だろう。
村から若者たちがやってくる。
彼らは顔とからだに模様を描いている。
鉄砲を手にして。

彼らはクマを殺しに来た。
その標的は私だ。
若者たちは、叫び声を上げる。
そして、私に向かって銃を向ける。

彼らは小道を突進してくる。
私は果敢に彼らに挑みかかり、防戦する。
小道のひとつを逃げ、木立の中に飛び込む。
追ってが近づいて来る。
激しい抵抗。
そして、元の巣穴に退避する。

若者たちは三回、巣穴を攻撃する。
私はその都度、違え小道を選んで飛び出していく。
私は毎回木立に逃げ込み、巣穴に戻る。

四回目の攻撃。
最後の逃げ道だ。
今回は逃げ切れそうにない。
とうとう狩人に追いつかれる。

私は殺害される。

そして私は村から離れた儀礼の小屋に運ばれ、置き去りにされる。

気がつくと、私の前に長老が座っている。
私たちはタバコを吸い、祈りながらその日の残りを過ごす。
もうすぐ日が暮れる。
私は小屋から出る。
そこには、大勢の部族の者たちがいた。

こうして、私はこの村で大人として認められたのだ。
部族の一員として。

私をしとめたあいつは、次の戦いの時に一団を率いる名誉が与えられたらしい。

ダコタ族(ミネソタ州)に伝わる「クマになる」という儀式。

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