もう二日間、何も食べていない。
そう、あのときから。
四つ足で歩き回り、地面を掘る。
歯をむき出して吠える。
ここは村から遠く離れた場所。
ここに来る前も数日間の断食。
一本の柱を立て、パイプを捧げてある。
柱の根元には二本の矢。
そして、その周りには色を塗った鳥の羽。
その柱から200メートルほど離れたところに穴を掘る。
深さは60cmくらいか。
この穴はクマの穴とよばれるものだ。
東西南北、四つの方角に沿って穴の上に十字に交差する小道をつくる。
この巣穴を柴で囲う。
そろそろ、その時だろう。
村から若者たちがやってくる。
彼らは顔とからだに模様を描いている。
鉄砲を手にして。
彼らはクマを殺しに来た。
その標的は私だ。
若者たちは、叫び声を上げる。
そして、私に向かって銃を向ける。
彼らは小道を突進してくる。
私は果敢に彼らに挑みかかり、防戦する。
小道のひとつを逃げ、木立の中に飛び込む。
追ってが近づいて来る。
激しい抵抗。
そして、元の巣穴に退避する。
若者たちは三回、巣穴を攻撃する。
私はその都度、違え小道を選んで飛び出していく。
私は毎回木立に逃げ込み、巣穴に戻る。
四回目の攻撃。
最後の逃げ道だ。
今回は逃げ切れそうにない。
とうとう狩人に追いつかれる。
私は殺害される。
そして私は村から離れた儀礼の小屋に運ばれ、置き去りにされる。
気がつくと、私の前に長老が座っている。
私たちはタバコを吸い、祈りながらその日の残りを過ごす。
もうすぐ日が暮れる。
私は小屋から出る。
そこには、大勢の部族の者たちがいた。
こうして、私はこの村で大人として認められたのだ。
部族の一員として。
私をしとめたあいつは、次の戦いの時に一団を率いる名誉が与えられたらしい。
ダコタ族(ミネソタ州)に伝わる「クマになる」という儀式。